研究者と研究者を支える人々を応援する、研妻精神 #39
2020/2/21妊娠が発覚して間もなく
襲ってくるつわり
何をしても気持ちがわるい
食べたら戻してしまう
色んな臭いに敏感になる
歯を磨くだけで吐き気がする
心配した知人に救急車を
呼ばれたことがあるくらい
悪阻で苦しむ体質だった
そんなある日
寝室で寝ていられず
リビングルームのソファで
横になっていると
浴室の方からシャワーの音が
聞こえてくる
上の階に住んでいる人が
ずいぶん長い時間シャワーを
浴びているな
と呑気に思いながら
吐き気を忘れようとウトウトする
すると
突然
シャワーだった音が
洪水のような
ゴォーーーーーゴォゴォゴォ!
という音に変わる
慌てて起き上がる
寝室で寝ている夫のところへ
行こうと
床に足をおろすと
ピシャっ
と床が水に浸かっていて
一気に焦る
足を水に濡らしながら
パシャパシャと
廊下を歩き
寝室にいる夫を起こす
夫も慌てる
深夜
真っ暗な海外の田舎町で
家がどんどん浸水していく
どうすればいいのか
誰に助けを求めればいいのか
こんなとき
対処法を考えるのは妻で
実行するのは夫になる場合が多い
まずは研妻の私の考えで
マンションの向かいに住んでいる
住人に助けを求める
しかし
小さい子どもと暮らすお向かいの家族
夜中に玄関でうるさくしたら
子ども達が起きてしまう
と思うと
ベルを鳴らし
起こすことができなかった
そんな間にも
水はどんどん溢れてくる
ついに家の玄関を開ける度に
中の水が一気に流れ出すようになった
階段をつたってマンションの
エントランスまで流れおちる
急がねば
これは緊急事態だ
緊急なときは
そう
救急とか
警察だ
そう思った私は
夫に電話をかけてくれるよう頼む
が躊躇する夫
それでも水は止まらない
仕方なく警察に電話する夫
助けを求めた
すると
ゆっくり状況を説明した後
浸水の対応は警察ではなく
消防が行うとのこと
やがて消防隊が到着する
騒ぎでお向かいの
ご夫婦も起きて
外へ出てきた
消防隊が入るので
中にいる
研究者夫と妻の私と上の子は
家から出なくてはならない
と指示を受ける
水に浮かぶマットレスで寝ていた
子どもを夫が抱きかかえ
荷物も持たずに
サンダルで家を出る
こちらの状況を見かねた
お向かいのお宅が
家を追い出された
私たちを受け入れてくれた
つわりの吐き気を抑えながら
お向かいのお宅に
お邪魔させてもらった
そして
ドイツの消防隊が手際よく
水道管破裂を対処してくれた
この水浸しの家には
もう住めないと
知らされた
*淡々と現実を受け止める、研妻精神*
頼れる身内のいない海外生活、誰がいつどんなとき「助っ人」になるかわからない
ご近所付き合いを大切にしておくといいかもしれない