研究者と研究者を支える人々を応援する、研妻精神 #28
2020/2/10大学研究員となった研究者夫の
海外ポスドク時代
子どもが生まれて間もない頃
夫のボス研究者から打診が来た
「ちょっとよその町に出張しないか?」
「どのくらいですか?」
「たぶん2ヶ月あれば十分だろう」
どうやらその町の研究所にしかない
機械や試薬があるらしい
それらを扱う認定を受けるためらしい
出産したばかりの研妻にとっては大打撃
あれこれ考える余裕もなく
子どもが小さすぎることを理由に
出発を遅らせてもらい
その間に家族みんなで一緒に
出張先で滞在できるよう
ゲストハウスを手配してもらった
通常は自分たちでゲストハウスの
手配をするのだが
今回はラボ都合ということで
お願いすることができた
出発当日
バタバタとよその町へ向かった
トラムとドイツ鉄道DBを乗り継ぎ
町の中央駅に到着
そこまではよかったのだが
そこから道に迷ってしまった
よその町にたどり着くことを目的に
移動してきたので
中央駅に到着した後のことを
考えていなかった
こんなとき
夫は自分で調べたがる
妻は人に聞きたがる
妻は小さい子どもを抱っこ紐に入れて
夫は大きめの旅行カバンを持っていたので
夫はゆっくり調べていられず
妻はそれを待つ余裕もなく
このときばかりは
妻スタイルをとることに夫も同意した
そうと決まれば早速
妻の私は近くを歩いている
現地の人に声をかけた
ゲストハウスの手続きをする
目的地までバスで行けることがわかった
いそいそとバスに乗り
なんとか到着
よその町のゲストハウスは
当時住んでいた町のゲストハウスと違って
大きくて新しくて綺麗だった
旧西ドイツ・旧東ドイツの差を
実感した瞬間となった
そこから約2か月間滞在するのだが
どこに行けば
スーパーで食材が買えるのか
どこに行けば
トイレットペーパーやオムツが買えるのか
どこに行けば
何が買えるのか
よその町で0歳児と新生活を送るための
日用品を買いそろえるという難題が
研妻を待っていた
夫は到着した当日から
何かと忙しくしていた
町の中心地からだいぶ離れたゲストハウス
小さい子どもを抱っこ紐に入れて
バスに乗って買い物できる場所を
探し歩くのは研妻の任務となった
町の中心地へ赤ちゃんと移動して
色んな現地の人に声をかけながら
途中で雨にも降られながら
どうにかこうにか
夫に頼まれた充電器のプラグも含め
新生活に必要なものを最低限
買い集めることができた
さすがに疲労が隠せない研妻
頭の中では
こんなフレーズがよぎる
「なんで私こんな事をしているんだろう?」
ふと立ち止まると
そんな想いにさいなまれる
そんな気持ちをよそに
慌ただしく新生活はスタートした
慣れない帯同生活で
自分を見失っていた
渡航当初からは
全く想像がつかない
忙しさだった
*淡々と現実を受け止める、研妻精神*
慌ただしさに流されることは、何もすることがないよりいいのかもしれない