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2020/06/15

研妻哲学154・任期付き研究者夫に、次の仕事はあるのかを考える

任期満了後を考える

契約が満了を迎える前、
数年に1度訪れる
次の仕事があるのかという問題

実際には、数年どころではなく
常日頃から脳裏で小さな声をあげている

まるで頭の中に小さなヒトが住んでいて
事あるごとに、
「次の仕事はあるのか」と
ささやいているようでもある

その理由はライフステージによって
変わってくるけれど、

今はなんといっても子育て
という親としての役割が外せない

夫の海外修行時代も家族で
乗り越えてきた背景があるので
現在も単身赴任はあまり考えていない

となると、子供の学びの場も
夫の職場がどこになるかに
大きく左右されることになる

研究者として首が繋がっても
繋がらなくても、どちらにせよ
引っ越しはすることになるだろう

そのため、
「お友達と同じ小学校にいける?」
と子供に聞かれたとき、
同じとは限らない可能性があることを
正直に答えるようにしている

任期付きの仕事の
なんと儚く脆いことかと
何度おもったことか
今となっては計り知れない

夫が海外ポスドク研究員のとき
採用試験は不合格で
実験も失敗が続き
言葉の壁がある現地の生活においても
数々のトラブルに悩まされ、
苦悩した時期、
「もうここまでだ」と思う度に
研究者夫は妻の私にこう言い聞かせた

「高く飛ぶために
 今は低い体勢を維持している」

「だから辛いのは当たり前」

「ここまで悪いことが続いたので
 何かいいことが待っているはず」だと
信じて揺るがなかった

私がもう限界ではないかと口にすると
「限界は自分で思うよりもっと先にある」
のだともよく言っていた

当時を回想してみえてくることは、
研究者夫は私が想像していたよりも
遥かに強い精神力を持っている
ようであるということ

夫にはそれを裏付ける
もう一つの決定的なエピソードも
あることを思い出さずにはいられない

ならばこの精神の強さはどこから
来ているのか、いくつか
考えられる点に加えて、
もっと探ってみたいとも思う

辛く苦しい環境の中で過ごす
という点においては、

ナチスの収容所に入れられるという
壮絶な経験をした精神科医フランクルの
言葉が刺さる

彼の言葉から気づかされたことは、
苦悩は戦う相手ではないということ

研究の仕事がどんなに大きくても
夫自身の使命が果たせるか
が問題であること

そして業績という言葉の捉え方は
私を励ましてくれた

言ってみれば、
仕事をやめて海外へ帯同するのは
職業上の業績を手放すことにも繋がるので
人を労ることも業績だというフランクルの
言葉にどこか救われた私がいる

研究者として次の仕事が見つかるかは
相変わらず現時点ではわからないので
今は今できることをしていくしかない
という現実と向き合う
2020年6月15日、月曜日の記録



*淡々と現実を受け止める、研妻哲学*


仕事が不安定なときは、相手を労るという業績を伸ばすときなのかもしれない





・参考文献
書名:『夜と霧』ビクトール・フランクルの言葉
著者:諸冨祥彦
出版社:コスモス・ライブラリー
発行年:2012年




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